中性浮力とは?

中性浮力 イメージ中性浮力とは水中で浮きも沈みもしない状態、つまり浮こうとする浮力(プラス浮力)と沈もうとする浮力(マイナス浮力)がちょうど釣り合った状態のことをいいます。
ダイビングをする時、体温の維持のためや身体の保護のためにウェットスーツを着ることがほとんどですが、これはプラス浮力です。
このプラス浮力を消してあげなければダイビングが始まりません。そこでウェイト(鉛の塊)を付けてプラス浮力を消します。
ウェットスーツはネオプレンという気泡の入ったゴムの生地で出来ていますが、水中に入ると水圧によって気泡がつぶれ浮力を失っていき、深度が深くなるにつれマイナス浮力が強くなります。強くなったマイナス浮力を補ってくれるのがBCD、そして呼吸です。

では、この中性浮力はどのようにしたら取れるのか??

減らせるだけウェイトを減らしましょう
オーバーウェイトは中性浮力にとって大敵です。初心者の人が陥りがちなのは、浮力コントロールは潜行出来ないからウェイトを増やす。ダイビングの最後に浮いてしまうからウェイトを増やす。その結果、BCDのインフレーターに気を取られ過ぎてしまってダイビングに集中できていない。何を見てきたんだか分からない。こんなことが起こりますがこれは大きな間違いです。
適正ウェイトで潜ることが出来れば、BCDに空気を入れる回数が減ります。空気は圧力変化をもろに受けるので入れる空気が少なければ、圧力変化を受ける空気の量が減り浮力コントロールが楽になります。ウェットスーツの厚さや肺活量にもよりますが、目指すところはBCDに空気を入れない。これが究極の浮力コントロールでしょう。

呼吸のコントロール
初心者の人の呼吸は大きく一定のリズムで行われることが多いです。これでは浮き沈みが止まりません。呼吸の量、スピードをコントロールすることによって、浮き沈みが楽にできます。息を吸って浮き始めるまで、息を吐いて沈み始めるまでのタイムラグを上手く使ってあげる。息を吸っても、吐いても急には動き始めません。つまり、浮き始める前に吐けば、沈み始める前に吸えば浮きも沈みもしない中性浮力が取れるのです。

ダイバーにとって1番必要なスキルともいえる中性浮力。
この中性浮力が取れるようになると、ダイビングでかなり利点があります。

中性浮力 イメージ1) 泳ぐのがすごく楽になります。
中性浮力がきちんと取れて入れば、フィンキックの力はすべて推進力になります。インストラクターがスーっと進んでいるのは中性浮力がきちんと取れているからです。これがマイナス浮力で泳いでいる場合はフィンキックを推進力と浮力にも使ってしまうことになります。自分を浮かすためにフィンキックをしているのですから、疲れてしまいます。しっかり中性浮力が取れるようになれば、楽にダイビングが出来ます。

2) エアもちが変わります。
中性浮力が取れていれば、その場所にとどまっている時は呼吸をしているだけですが、マイナス浮力の場合はずっと足りないためにずっと泳ぎ続けている。ずっと泳いでいるのだから呼吸が乱れ、呼吸が早くなってしまいます。BCDへの空気の出し入れも多くなるので、ここでも空気の消費は大きいでしょう。これも中性浮力が取れれば大きく改善して、エアもちが良くなります。

3) 水底に優しくなれる。
水底にはサンゴがあり、砂地がありそこには様々な生物が潜んでいます。サンゴの成長は非常に遅く、なかには1cm伸びるのに数年かかるようなサンゴもあります。このようなサンゴを傷つけないためにも中性浮力が必要です。また、砂地を泳いでいる時に、自分の後ろがもくもく煙っているようになっている。これも中性浮力が取れていないということ。そうなれば透明度が落ちる、次にそこを通る人に迷惑がかかるだけでなく、ハゼなと砂地に潜む生物の巣穴などを壊しかねません。これも中性浮力が取れれば、余裕を持って生物の観察ができ水底に優しくなれえます。

4) 安全停止、ウォールダイブが楽になる。
ドリフトダイビングやドロップオフでのウォールダイビングをしていると掴まるところもなく、ただ中層に浮きながらの観察や安全停止になります。ここでマイナス浮力であれば、観察もままならないし安全停止も大変です。中性浮力が取れるということはすべてに繋がってくるのです。

このようなことからも、中性浮力はダイビングにとって最も大切なスキルだと言えます。中性浮力が取れることによって、ダイビング中に余裕が出来、より楽しい経験や発見があるはずです。
初心者の人に心がけていただきたいことは、中性浮力が取れているのかを意識すること(フィンキックを止めた時に浮いていられるのか?沈むのか?)。そにうちに意識が無意識に変わるはずです。